ダイエットのグレード

肥満外来と名付けたものの、先例がないので手探り状態です。
治療法など確立されていませんでしたし、何をするのかわからない人がほとんどで、患者さんはほとんど来ません。 これではヒマン外来ではなくヒマ外来だと、ずいぶん周囲から茶化されたものです。
やがて2、3年たつうちに、患者さんは次第に増えてきました。 私も86年にアメリカのP大学精神科に行って、A教授が肥満に対する治療法として開発したビヘイビアーモディフイケーション、つまり「行動修正療法」の最新プログラムを学び、日本に持ち帰りました。
最初は栄養士、運動指導士、心理療法士の方々とチームを組んで診療プロジェクトを作るなど、さまざまな試みをしました。 そうするうちに各方面から反響が出てきて、軌道に乗り始めたのが80年代後半のことです。

この間、私は肥満外来で、患者さんからいろいろと相談を受けてきました。 その中で1番多い悩みは、「食餌療法を身に付けるのは難しい」「どういう食事を摂るべきか、なんとか理解しても、実践するのは困難だ」というものでした。
私が勤務していた病院には、前にお話ししたような糖尿病患者さん向けの2週間の教育入院というシステムがありましたので、肥満に糖尿病を併発している患者さんにはこの教育入院に参加してもらい、食餌療法を勉強してもらいました。 すると入院中は体重が減り、糖尿病も良くなって退院するのですが、しばらくすると元の木阿弥というケースが多かったのです。
何回か入院を反復しないと効果が上がらないということを、イヤというほど痛感させられました。 今では多くの病院でいろいろな生活習慣病に対してこのような教育入院システムが導入されています。
しかし肥満というだけで、他にたいした病気も併発していない患者さんに対しては、このような教育入院のシステムは用意されていないのが現状です。 事実、肥満それ自体は病気ではありませんから、肥満に加えていろいろな病気が併発してきた状態、すなわち肥満症と診断されなければ、健康保険を利用して診療を受けることはできません。
しかし、病気を併発してから減量を始めるよりも、まだ明らかな病気を発症していない、いわゆる予備軍のうちに積極的に手を打って減量したほうが、治療のみならず予防という面からも、はるかに効果的でたやすく、しかも安上がりなことはいうまでもありません。


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